目次
はじめに
ビジネス成果を創出する生成AI活用をどのように実現するのか、本記事では生成AIアプリ開発プラットフォーム 「Dify」の活用事例を交えて解説します。
▶関連記事:ビジネスを強化する生成AI活用シリーズ①:オンプレミス+ローカルLLMでセキュアに生成AI活用はこちら
Difyの特長と活用するメリット
まず、Difyの特長と活用するメリットを大きく二つに分けてご紹介します。
ドラック&ドロップで簡単に処理フローを定義可能
Difyはプログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップでの操作が可能で、開発者だけでなく非エンジニアの方でも活用しやすいツールです。
ここでは特徴的な機能として、作成するアプリの裏側の処理フローを定義するワークフローの機能をご紹介します。
【各ブロックの設定内容】
① 開始ブロック:検索のカテゴリを選択
② 条件分岐のブロック:検索カテゴリに応じて後段のフローを分岐させる
③ ナレッジ検索のブロック:検索カテゴリに応じたデータソースを検索
④ LLMのブロック:検索結果を元にLLMが要約
⑤ 公開ボタン:作成したフローのチャットボットをすぐに公開可能
このように様々な機能を持ったブロックを繋げることで簡単に処理フローを定義することができるため、開発からリリースまでのリードタイムを短縮できることが大きなメリットです。
既にご利用いただいているユーザー様からも、「Difyは直感的な画面操作が可能で、アイディアとして考えていることが簡単に実現できるツールである」といったお声を頂戴しています。
ローカル環境での利用が可能
Difyのもう一つの大きな特長は、ローカル環境にインストールして利用できるということです。
ローコード/ノーコードの生成AIアプリ開発ツールは様々ありますが、クラウド環境での利用が主流で、ローカル環境での利用を公式でサポートしているものは多くありません。
ローカル環境での生成AIアプリ開発や利用には、データセキュリティや、金融・公共といった規制の厳しい業種でのコンプライアンス対応のしやすさ、外部ネットワークに依存しない安定的な稼働やネットワーク遅延の影響の最小化、長期的な視点で見たときのコストの観点など、様々なメリットがあります。
これらのメリットを享受しながら、Difyでのクイックな開発が実現できることは、よりビジネスインパクトの大きい業務への生成AI活用を後押しするものであると考えます。
TDSEは日本国内におけるDifyのオフィシャル販売・開発パートナーです。
エンタープライズ版のご提供やテクニカルサポートが可能です。
Difyの企業導入や活用についてお困りの際は、お気軽にご相談ください!
生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify」+ローカルLLMの活用事例
ここまで、Difyの特長やメリットをご紹介してきました。本章では実際にTDSEがDifyを活用してご支援したプロジェクト事例をご紹介します。
保守・運用における社内知見の活用促進

こちらのお客さまでは、保守運用担当者がIT製品に関する過去の調査や問合せへの対応結果を記録し、担当者間で共有しています。 しかし、担当者によって記録しているファイルがわかれていたり、書き方にばらつきがあり、蓄積した知見の一覧性や検索の網羅性に欠けるといった課題をお持ちでした。 加えて、運用の知見は企業の競争力の源泉であり、一部お客様に特化した情報も含まれているため、データセキュリティの面でもこれらのデータを使ったLLM活用にリスクを感じていらっしゃいました。
そこで、これらの課題の解決策として、ローカルLLMとDifyをオンプレミス環境に導入し、単一のアプリで一元的に蓄積した知見を検索できるソリューションを構築しました。
▶関連記事:ビジネスを強化する生成AI活用①:オンプレミス+ローカルLLMでセキュアな生成AI活用環境を整える
こちらの事例では弊社のエンジニアだけでなく、お客さまにも実際に手を動かしていただき、DifyでUIや処理フローを作成頂きました。 一方で、裏側のコアとなる検索のロジックについては、TDSEの自然言語処理の技術に長けたエンジニアが構築し、それをDifyに接続する形でご活用いただいています。 複数ファイルに渡る検索や表現の揺らぎ等が解消され、検索にかかっていた工数の削減、検索漏れの減少による対応品質の向上といった効果が期待できます。
LLMを活用したFAQ自動生成、検索システムの開発
続いて、LLMを用いたFAQ自動生成、検索システム開発の事例です。

こちらのお客様は、自社サービスに対して日々届く問合せからFAQを自動生成することでカスタマーサポート担当者の業務効率を向上し、FAQなどのデータベースの情報を元に回答するチャットボットによって、ユーザーの問合せへの回答の即時性や正確性を向上したいという課題がありました。
この課題に対し、ヘルプページ上に掲載するFAQを問合せ内容から自動生成し充実化、また、様々なデータベース(既存FAQ、マニュアルの該当ページ、新規生成したFAQ)から一元検索し回答するソリューションを構築しました。
この事例の中でも注目していただきたいのは、LLMを個人情報の除去に活用したことです。
問合せ内容にはカスタマーの氏名、住所、電話番号といった個人情報が含まれます。そのため、問い合わせ内容のテキストを元にFAQを生成すると個人情報を含んだFAQが生成されてしまうため、問合せ内容のテキスト中に含まれる個人情報を検出し、分類し、除去する(マスキング、完全削除等)フローを構築しました。
LLMというとチャットでの対話がフォーカスされがちですが、それだけでなく個人情報などの固有表現の認識や、問合せのテキストの分類タスクに対してもLLMを効果的に活用した事例となります。
Difyは拡張性が高く、こういった複雑な処理フローもGUIで定義することができるため、比較的ローコストかつ、短期間での開発、リリースを実現することができます。
今後も急速に進歩するLLM技術に遅れを取らないよう、スピード感のある開発サイクルを実現するために、Difyのようなローコード/ノーコードの開発ツールは非常に有効であると考えられます。 また、ご紹介した2つの事例は、自社独自のノウハウや個人情報といったセキュリティレベルの高い情報を含んだデータを活用しています。 機密性の高い情報を取り扱う場合、ローカル環境にDifyをインストールして利用することが可能であり、これはデータセキュリティリスクの最小化という観点で有効な選択肢の一つとなるでしょう。
まとめ
ここまではDifyを使った事例や、特長、メリットをご紹介しました。 日々急速に生成AIの性能が進化していく中で、生成AIの恩恵を最大限に活かしビジネスの成長を促進するためには、Difyなどのローコードツールを用いたクイックな開発とリリースが非常に重要です。 ただし、Difyはあくまでツールですので、導入すれば生成AI活用がうまくいくというわけではありません。
ビジネス成果を生み出す生成AI活用を実現するためには、こういったツールをうまく使いこなしながら課題主導で取り組んでいく必要があります。 まずはビジネス課題起点でテーマを探索し、効果や実現可能性といった観点で評価し、優先的に生成AIで解決すべき課題を選定することが最初の一歩として非常に重要です。
TDSEのLLM活用支援サービスは課題主導×伴走支援で生成AI活用のテーマアセスメントからソリューション開発、業務接続や保守運用も含めた一気通貫のサポートが可能です。
ご興味をお持ちの方は是非お気軽にご相談ください!