目次
はじめに
多くの企業でDX人材育成が進む一方で、
「研修でデータ分析は学んだものの、自身の業務にどう適用すればよいかわからない」
「PoCまでは進んだが、実務での活用に結びつかない」
といった声も少なくありません。
本記事では、全社的なデータ活用人材の育成を進めてきた大手生命保険会社A社が、研修の中間工程として実施した「生成AIを活用したテーマ創出ワークショップ」に焦点を当て、どのようにして業務課題とデータ活用を結びつけていったのか、その取り組みをご紹介します。
人材育成の次に問われた、ビジネスとデータをつなぐ視点
A社は、業界内でもいち早く全社的なデータ活用推進に着手してきました。
2021年から「本社および事業部門の各部に1名のデータアナリストを配置する」という目標を掲げ、数年がかりで育成プログラムを実施。
現在では、ほぼ全ての部署に分析スキルを持った人材が配置されるという、素晴らしい成果を上げています。
一方で、研修でデータ分析の知識や手法を学んだ後、次に重要になるのが、「日々の業務課題を、どのようにデータ活用のテーマとして捉え直すか」という点でした。
業務上の課題や改善のアイディア自体は各部門に存在しています。しかし、それらをそのまま分析テーマに落とし込もうとすると、
「どの切り口でデータを見るべきか」
「どこまでを分析の対象とするのか」
「分析の結果、どのようなアクションにつなげたいのか」
といった点で思考が行き詰まるケースも少なくありません。
特に、データ分析の実務経験がまだ多くない段階では、業務課題を“データで扱える形”に変換するプロセスそのものが難しいという側面があります。
A社では、研修で学んだ知識を実務に結びつけるためには、単にテーマを与えるのではなく、テーマを発想し、具体化していく思考のプロセスを体験する機会が必要でした。
ビジネス視点と技術視点を交差させる場としてのワークショップ
こうした背景を踏まえ、A社が研修の中間工程として実施したのが、「テーマ創出ワークショップ」です。
本社および事業部門から選抜された約20名の社員が参加し、3~4名で構成されるグループごとに、自身の業務課題を起点としたデータ活用テーマの発想・具体化に取り組みました。
本ワークショップの特徴は、単なるアイデア出しの場ではなく、業務課題をどのようにデータ活用のテーマへと落とし込んでいくか、その思考プロセスを体験する点にあります。
その前提として重要なのは、現場で何が起きており、どこに違和感や改善余地があるのかを肌感覚で捉えているのは、各業務の当事者だということです。
だからこそ本ワークショップでは、参加者自身が課題を言語化し、テーマを描いていくことを基本方針としました。
TDSEはデータ活用や分析の専門家として1名ずつグループに入り、議論の整理や視点の補助を行いながら、参加者の思考を支える役割を担いました。
ワークショップでは、「攻め(売上向上)/守り(コスト削減)」と「既知/未知」の2軸で構成した4象限のフレームワークを用い、業務課題を多角的に整理していきます。

ここでいう「未知」とは、まったく新しい発想を指すものではなく、これまで自社で事例がなかったテーマや、既存事例を自部門の業務に応用するようなテーマを意味しています。
参加者は、自身の業務経験に基づき、「どの業務に課題があるか」「その課題をデータを使って解決できるか」といった問いを立て、グループ内で議論を深めていきます。
その過程で、必要に応じて生成AI(ChatGPT)も活用し、既存事例の整理や切り口の洗い出しといった思考の補助を行いましたが、あくまで中心となるのは参加者同士の対話と、支援担当との壁打ちでした。
このように、業務当事者の視点を起点とし、人による議論と伴走支援を軸に設計されたワークショップを通じて、各グループでは下期に実データを用いて検証・分析していくことを前提とした、具体的なデータ活用テーマを描くことができました。
なお、創出されたテーマについては、下期の実践フェーズにおいても、引き続きTDSEの支援担当が伴走し、分析や活用のプロセスをサポートしていきます。
A社の取り組みから見えてきた、データ活用を「動かす」の要点
A社の取り組みから見えてきたのは、データ活用を実務に結びつけるためには、分析スキルやツールの有無だけでなく、「どの業務課題を、どのようにデータで解決するか」というテーマ発想のプロセスが重要であるという点です。
業務課題は現場に存在していても、それをデータ活用のテーマとして具体化するには、業務理解とデータ視点の両立が求められます。
A社では、業務を最もよく理解している現場の担当者が主役となり、TDSEというデータの専門家が伴走する形でテーマを発想することで、研修で学んだ知識を実務につなげる土台を整えることができました。
こうした「テーマ創出ワークショップ」は、本事例のような人材育成研修の一環としてだけでなく、
・データを使ってどのような改善アイディアを検討すべきか整理できていない
・データはあるものの、何から手を付ければよいか分からない
といった課題を抱える企業にとっても、有効なアプローチです
TDSEでは、このワークショップをデータ利活用アセスメントの前工程として位置づけています。
まずは業務課題とデータ活用のテーマを整理・具体化し、その上で、データの整備状況や実現可能性、取り組むべき優先度を評価することで、実務につながるデータ活用の道筋を描くことが可能になります。
まとめ:データ分析は「手段」に過ぎない
プロジェクトを支援したTDSEの担当者は、次のように振り返ります。
「データ分析そのものを目的にしてしまうと、実務での活用にはつながりません。重要なのは、あくまでビジネス課題をどう解決するかです。」
分析手法を学ぶ研修は、データ活用に向けた第一歩に過ぎません。
その先で実務適用につなげていくためには、業務課題を起点にテーマを描き、データや環境の状況を客観的に整理していくプロセスが欠かせません。
今回のワークショップ受講者は、創出したテーマを分析設計に落とし込み、下期には実データを用いた分析・検証の工程へと進んでいきます。 ワークショップは単発の取り組みではなく、その後の実践フェーズまでを見据えた研修プロセスの一部として位置づけられています。
受講者は、約1年間にわたる研修を通じて、座学から実務への適用までを段階的に経験し、研修修了後には社内認定されたデータアナリストとして、自身の部署におけるさまざまな業務テーマの分析に取り組んでいくことになります。
現在はTDSEが伴走支援を行いながら進めていますが、将来的には社員一人ひとりが業務の中で当たり前にデータを活用し、意思決定できる組織を目指した取り組みが続けられています。
データや人材は揃っているものの、「どのテーマから取り組むべきか分からない」「過去の取り組みがPoCで止まっている」といった課題を感じている場合、まずは現状を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
TDSEのデータ利活用アセスメントでは、業務の実態に即した形で、次の一歩を検討するご支援を行っています。
眠っているポテンシャルを実務に繋げるために何から始めればよいか、まずはお気軽にご相談ください