Tecnos Data Science Engineering

CASE STUDY導入事例

電気の命綱である送配電網を
AI技術を活用して効率的に見守る

東京電力パワーグリッド株式会社

点検・監視 設備保全 AI/IoTソリューション
東京電力パワーグリッド株式会社

身近な存在である電気だが、いつでも自由に利用するには、発電から送電までいくつもの仕組みが欠かせない。
東京電力グループにあって、変電所や送電線など送配電設備を担当する東京電力パワーグリッド株式会社では、総延長(設備亘長)約1万4500キロメートルもの送電線の点検作業を効率化するためにAIの活用に取り組み、TDSEの技術力とサポート力がそれを可能にしている。

ヘリコプターから撮影した映像のチェックをAIで

全国に張り巡らされた送電網は、電力利用の命綱だ。どこかで途切れれば、電力の供給がストップし、人々の生活に大きな支障をきたす。東京電力パワーグリッド株式会社では、この送電網にトラブルが起きないように、日々保守作業に取り組んできた。
同社が保全している送電線の総延長(設備亘長)は1万4500キロメートルにおよび、これらのメンテナンスを安全性を確保しながら、どう効率化するのかは、同社にとって大きな経営課題だった。
従来の送電線点検作業は、保守作業員が鉄塔に登り、送電線に乗り出して、目視で確認する方法や、地上から高倍率のスコープにより目視で確認する方法がメインになっている。

保全高度化推進グループ送電担当課長
江坂真吾氏

「ただ、山間部など保守作業員が容易に確認できないような場所では、ヘリコプターから高倍率のビデオカメラで送電線を撮影して、映像を確認しています」と東京電力パワーグリッドの工務部保全高度化推進グループ送電担当課長の江坂真吾氏は説明する。
しかし、問題は映像の確認作業に時間がかかることと、熟練の技が必要とされることだ。「ヘリコプターで撮影した映像は、そのままでは人間の目では追えません。しかも電線の異常を外観から見つけるのは決して簡単ではありません。そこで熟練の保守作業員が、撮影した映像を約10分の1の速度でスロー再生して確認しています」(江坂氏)。
ヘリコプターによって撮影された映像は2016年度実績で約133時間にもなる。それを人間の目で確認するためには、最低でも1330時間が必要になる。

しかも、そのクオリティは熟練者の目に依存している。保全高度化推進グループ送電第一チームリーダーの内村貴博氏は「熟練度による差をどうカバーするのかも課題だと考えていました」と語る。
そこで同社が考えたのが、この映像による点検作業をAIで効率化できないかということだ。江坂氏は「2年くらい前からAIについては、どういう技術なのか、どのような活用ができそうなのか、どう効率化されるのかといった視点から検討してきました。その第一弾としてこの映像による点検作業への活用を考えたのです」と話す。

小規模なPoCを通して将来への手応えを得た

AIが活用できるかを検討するために、日本マイクロソフトとどう進めるべきかについて意見交換を行った。2016年10月のことだ。その際に紹介されたのがテクノスデータサイエンス・エンジニアリング(以下、TDSE)である。

「まず小規模なPoCでどれくらいの精度が望めるのかを確認するため、過去の異常のあるデータを渡して検証してもらうことにしました。」と、今回の導入プロジェクトを担当した保全高度化推進グループの宮島拓郎氏は話す。PoCのテーマは“熟練の保守作業員がこれまでに確認した異常について、AIでも同じように異常を見つけることができるか”だった。
実は、1ヶ月ほどかけて行なったこのPoCの結果は完璧ではなかった。AIが見逃した異常箇所もあった。しかし、これを機に同社はAI活用へと舵を切る。

保全高度化推進グループ送電第一チームリーダー
内村貴博氏

内村氏は「TDSEからは、精度向上のための提案をいただきました。納得のできる提案で、将来的に実現可能と判断できたのです」と語る。
宮島氏も「当初から100の精度を目指すのではなく、それを運用でカバーしようと考えていました」とPoCのスタンスを説明する。
同社では、異常箇所の見落としがなければ、正常箇所を異常と判断することもある程度許容するという前提で、AIの判断の精度を調整。点検作業時間を当初50%削減、3年後には80%削減を目指し、段階的に進化させることを想定していたのである。
宮島氏は「PoCの精度そのものにはそれほど差はありませんでした。それよりも、今回やりたいことと、TDSEが提案してくれた進め方が合致していたことが決め手になりました」と振り返る。
ありもののAIではなく、その都度最適な環境を選び、学習のさせ方、前処理の方法を検討し、課題を改善しながら進めていくというTDSEのアプローチが受け入れられた形だ。PoCで示した、将来の見通しの確かさも評価された。

他の業務へも応用できるAI活用スキルを蓄積

保全高度化推進グループ
宮島拓郎氏

AIを活用した「架空送電線診断システム」の開発は、2017年11月からスタートし、2018年度上期中の運用開始を目指して準備が進められている。コアとなる診断エンジンは今年3月に完成。現在付属品も含めた点検作業にも対応できるように開発を継続しており、7月中にはこの新機能がリリースされ、その後実運用に移行できるよう社内調整を行っていく予定だ。
またAI自体を他の分野に適用することも合わせて検討している。「今回は当社にとって初めてのAI活用であり、送電線の点検作業にターゲットを限定して取り組んできました。
しかし、鉄塔やその周辺など送電線以外にも数多くの設備があり、同様に点検作業の効率化が求められています。今回の経験をベースに様々な業務への展開を考えています」と江坂氏。

内村氏は「元データの重要性や前処理の方法、精度を上げるための学習方法など、今回のプロジェクトで得られた知見も数多くあります」とAI活用についての進歩を強調する。
蓄積したノウハウは、当然、他社の設備にも適用することもできる。今回得られた知見を生かした新たなビジネスの可能性も広がっている。
宮島氏は「今回Microsoft Azure上でシステムを構築し、AIのシステムを開発するためのプラットフォームを手に入れることができました。クラウド上のプラットフォームだけに、GPUを使った高速処理など、今後発展させていくことができます」と将来のシステムの広がりにも自信を見せる。
同社がこうした横展開に意欲を持った背景には、TDSEと一緒にプロジェクトを進めた経験も大きかったようだ。「開発スピードの速さに驚きました」と江坂氏は話すが、顧客の業務を積極的に理解し、素早く対応し、改善を積み重ねるというベンチャー企業特有のアプローチが、伝統的な企業である同社に新たな風を吹き込むきっかけとなったとも言えるのではないだろうか。

東京電力パワーグリッド株式会社

東京電力ホールディングスの100%子会社として、電力自由化に向けた東電全体の社内分割の中で送配電事業を担当するために20154月に設立された。小売電気事業者を対象に関東地方と静岡県東部に電力を供給し、送電線については、総延長(設備亘長)14500キロメートルに及ぶ設備の保守メンテナンスを行なっている。

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