TDSE株式会社

成熟したビジネスの既成概念を打破して データサイエンスで企業価値を高める(コニカミノルタジャパン株式会社)

データ利活用サービス

コニカミノルタのオフィス関連製品の国内販売を手がけるコニカミノルタジャパンの主力製品はマルチファンクションプリンタ(MFP)である。すでに成熟している市場で、どのような成長戦略を描くのかが、まさに喫緊の課題だった。
同社ではデジタルトランスフォーメーションを断行し、生産性向上に向けた取り組みを開始した。その一翼を担うのが同社のデータサイエンス推進室である。

簡単で効果が出るものを最初のターゲットに

マーケティング本部
データサイエンス推進室
室長 矢部章一氏

 「データリテラシーの高い企業は、資産価値が高いと言われています。この部署の役割は当社のデータリテラシーを高めること。そのためにモデルなどを作って提供するとともに、データに対する考え方の普及・啓蒙活動を行なっています」と語るのはコニカミノルタジャパン株式会社 データサイエンス推進室長 矢部章一氏だ。

 同社のデータ活用の歴史は矢部氏の入社とともに幕を開けた。通販大手などで活躍していた矢部氏が入社したのは2013年11月。

「社会人になって以来、一貫してデータを活用した仕事に携わってきました。新しい職場として当社を選んだのは、データ活用の専門組織がなかったからです。データ活用の組織を作る。それが私に与えられた役割でした」と矢部氏は入社当時を振り返る。

 これまで本格的にデータを活用した経験がない同社で、中途で入社した矢部氏が裏付けされた理論を展開して新たな組織を作るため、誰もが納得する実績が必要だった。よって矢部氏は組織作りの為に、約3ヵ月間かけて自ら営業や保守など全社の現場を経験しながら、コニカミノルタジャパンの実態を把握して、独自の理論で具体的な事業計画を策定した。そして最初のターゲットとしてトナーに狙いを定めた。

「 マルチファンクションプリンタは国内に数十万台あり、それぞれに4色のトナーが装着されています。それを当時は個々にお客様に配送していました。配送の無駄を数パーセントでも改善できれば、お客様の受け取りの手間の削減と数億円単位のコスト削減。つまり顧客満足とコスト削減が両立できる効果が上げられると考えました」(矢部氏)。
 鍵はトナーがなくなる時期を正確に予測することだ。それがわかればお客様に適切なタイミングで予備トナーを届けることができ、効率的に配送することで物流コストも引き下げられ、予備トナーの在庫を減らすことにもつながる。削減できるコストは年間2億円と試算された。

 「データサイエンス的には予測モデルが作りやすいというアドバンテージもありました。ビッグデータからなくなる時期を予測するのは比較的容易です。しかもトナーは消耗品としてのボリュームも大きい。最初に手をつけるには格好のターゲットでした」と矢部氏は語る。

複数の協力ベンダーと共に体制作りに取り組む

 データサイエンス部門を設立するためのプロジェクトがスタートしたのは2015年のことだ。矢部氏は独自の理論に基づいたデータサイエンス部門運営に必要なインフラ構築や分析体制構築を行うために複数の協力ベンダーと共に活動をスタートした。「いろいろな企業に声をかけさせてもらいました。しっかり仕事ができるところと組みたかったので、データの一部を隠した問題を出して、論文形式で回答を求めました。問題を解くためのアプローチから、一緒にできる相手なのかを判断したかったのです」(矢部氏)。この時に声をかけたうちの一社が、設立2年目のTDSEだった。矢部氏は「当時はまだデータサイエンティストが5、6名の規模だったと思いますが、大手と比べて真摯な対応で、質問も的を射ていました。データサイエンティストは色々な部署に質問して課題を炙りださなければなりません。ビジネス常識がないとできない仕事です。そのビジネス常識を得ようという姿勢があるという意味で高く評価しました」と話す。

 コンペの結果、TDSEが協力ベンダーの1社に選定されプロジェクトが本格的にスタートし、インフラ構築や分析体制構築が進められた。モデルに関しては、トナー配送の効率化が可能か見定めるためのPoCを進め、想定通りの効果がでると確信した。翌年にはプロジェクトは発展的解散をし、「データサイエンス推進室」という組織が立ち上がった。トナー配送の効率化のモデルは、基幹システムと連動させて初年度から想定通りのコスト削減を実現。同様の発想で部品の予兆交換にも取り組んだ。「これまで個別のチェックが大変で、時期が来れば定期的に交換していた部品を、予兆保全に切り替えました。これによって部品代だけで年間3億円のコストダウンができる計算です」(矢部氏)。数字で実績を示し、今後の費用対効果が見えたことで弾みがつき、データサイエンス推進室はデータサイエンティストの自社採用を進めて組織を拡大した。現在は受注する確率を割り出して、確率の高い企業をリスト化して営業にわたすといった営業支援にもデータサイエンスを活用し、大きな成果を上げている。

マネタイズすることで初めて信頼される

 データサイエンスの活用は立ち上げがポイントになる。「誰もがはじめからデータサイエンスの力を信じているわけではない」と矢部氏は指摘する。だからこそ相手に寄り添って距離感を縮め、信用してもらうことが必要だ。1つ目に見えた成果が上がれば、歯車は回り始める。同社の事例はその模範的なケースだと言えるだろう。

 「データサイエンスの体制がうまくいかない会社を見ると、やるべきことから手をつけていないケースが殆ど。何をやって、いつまでに成果を出すのかというマネタイズの方程式ができていません。まず方程式を作り、成果がでることを客観的に見せることです。マネタイズができるとわかれば経営陣は反対しませんし、新しい技術も導入できるようになります」(矢部氏)。
 
  しかし、同社でも立ち上げ時には苦労があった。データサイエンスのプランニングは矢部氏一人が行った。そのプランニングを遂行するため、設立間もないTDSEを協力ベンダーの1社として体制作りが始まった。「ゼロから組織を立ち上げる困難さをわかってくれる会社と組めたことはラッキーでした」と矢部氏は語る。

 矢部氏が評価するのは、TDSEのスタンスだ。「こちらのプランニングに対して一緒に取り組んでくれました。こちらからの指示を待つのではなく、前向きな提案をしてもらうという関係性が構築できたことが大きかったと思います」(矢部氏)。

 現在もお互いに切磋琢磨する関係は続いている。「コニカミノルタジャパンのデータサイエンスは自由研究をしているかのよう。だからこそ自らを律して結果を出す必要性がある」と矢部氏は話す。いまではTDSEもチームの一員のように一緒に活動する日々が続く。
 

生産性を向上させて働き方を変えていく

 今後の展開について矢部氏は「例えば働き方によってレコメンドを出すような、人に合わせたAI( 人工知能)を作っていきたい」と話す。
例えば保守業務において、スキルのある人、時短勤務をしている人などでそれぞれ状況は異なり、もっとも最適な業務内容は人によって変わってくる。データを瞬時に処理することで、その人に最適なレコメンドができれば、より高い生産性が上げられるようになる。

 つまり、目的は生産性の向上によって働き方を変えることだ。「当社では「いいじかん設計」として、時間を3つに分けています。「作業じかん」、「創造じかん」、「自分じかん」です。日本の生産性が低いと言われている理由は、非効率な「作業じかん」が多いからです。データサイエンスを活用して「作業じかん」を圧縮できれば、他の2つの時間を増やすことができます」と矢部氏は指摘する。そのために今はAIの活用を促進している。モデルを数多く作っただけでは、受け手の側の人間が最適なモデルが何であるか判断できないので、AIによって状況を判断し、最適なモデルをレコメンドする仕掛けが必要になる。さらにテレマティクスやARといった最新技術を組み合わせることで、より現場で使われて、成果につながる仕組みが提供できる。

 「ここ2年は部署の立場を安定させるために、結果を求めてきました。今は若い社員も成長して、順調に回り始めています。これからは更に最先端のことを積極的に手がけていきます」と矢部氏は意欲を語る。

 結果を見せてデータサイエンスの力を理解してもらい、さらに会社に新たな価値を提供していく。
同社では、その好循環のサイクルが今まさに確立されている。

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コニカミノルタジャパン株式会社

従業員数3, 508名(2018年4月現在)、約150カ国でセールスやサービスを展開するコニカミノルタグループのオフィス関連製品の国内販売会社として、2016年4月に設立された。日本全国に拠点を展開し、複合機・プリンター、印刷用機器、ヘルスケア用機器、産業用計画機器などの販売とそれらの関連消耗品、ソリューション・サービスなどを提供している。

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