
MLOpsとは、「機械学習モデル(入力したデータの内容を評価し、結果を返す仕組み)の開発から運用」までをスムーズに進める手法のことです。
近年はデータ利活用の重要性が増したことで、機械学習モデルを作成するさまざまなサービスが登場しています。
しかし、適切な進め方をしなければ、機械学習プロジェクト(機械学習モデルを開発・運用するプロジェクト)がうまく回りません。その結果、精度の低い予測結果を出してしまう恐れがあります。
そこで本記事では、MLOps環境を構築することで得られる効果や、押さえておくべきポイントを説明します。
また、MLOpsの支援に関する資料もご用意しておりますので、是非ご覧ください!
目次
MLOpsとは?
MLOpsとは、「Machine Learning(機械学習)」と「Operations(運用)」をあわせた造語です。
「機械学習チーム、開発チーム」と「運用チーム」がお互いに協力し合い、機械学習モデルの開発から運用までをスムーズに進める手法を指します。
具体的には、次のような工程をITツールなどを利用して自動化し、ビジネスに活用するまでにかかる時間を短縮させます。
- 1. 開発:機械学習モデルを開発環境で作成する
- 2. トレーニング:予測結果が問題ないか確認、調整する
- 3. デプロイ:機械学習モデルを開発環境から本番環境に移す
- 4. モニタリング:予測結果にズレが生じないか監視する
- 5. 更新:ズレた原因を調査し、機械学習モデルを改良する
そもそも機械学習プロジェクトでは、「機械学習モデルを作ること」にばかり目が向きがちです。
しかし、本来の目的は「機械学習モデルを使い正確な予測をすることで、ビジネスの意思決定に活かしたり、新しい価値を生み出したりする」こと。
そのためには、特にモデル開発後の「4.モニタリング」や「5.更新」が重要です。ビジネスの変化にAIが対応できるよう、メンテナンスし続ける必要があります。
したがって、継続的に機械学習モデルを改善できる環境を作るために、MLOpsの手法を取り入れることが大切です。
では、MLOps環境を構築すると具体的にどのような効果があるのか、見ていきましょう。
MLOps環境を構築することで得られる2つの効果
MLOps環境を構築することで得られる効果は、次の2つです。
- 機械学習モデルの品質が劣化することを防げる
- プロジェクトのチーム間でスムーズに連携しやすくなる
順番に説明します。
効果1. 機械学習モデルの品質が劣化することを防げる
1つ目のメリットは、機械学習モデルの品質が劣化することを防げる点です。
そもそも機械学習モデルは、構築した時点でどれだけ優れていたとしても、時間が経つごとに劣化します。
機械学習モデルを構築したときに使用したデータは、その時点では最新データであっても、段々と古くなるからです。
- 1. モデル作成時に商品を購入してくれる客層が30代だった場合、そのユーザーが購入する予測を作成する
- 2. しかし、10年後にはユーザーが40代になるため、購入する商品の対象も変わる
- 3. 40代のユーザーの購買予測をするのに、30代のデータを使うことになってしまう
- 4. 予測の精度が落ちてしまい、適切な購買予測ができなくなる
上記のとおり、過去のデータを活用したままでは、「今のユーザー」の行動に適した予測結果を返せません。
MLOpsの環境を築くことで、運用チームが「対象ユーザーに合った予測結果を出せているか」を監視し、ズレが生じたら速やかに機械学習・開発チームにフィードバックできます。
それにより機械学習モデルを改善して、ビジネスに役立つ予測結果を維持することが可能です。結果的に、機械学習モデルの精度を保つことにつながります。
効果2. プロジェクトのチーム間でスムーズに連携しやすくなる
プロジェクトのチーム間で、スムーズに情報連携しやすくなることも、MLOps環境のメリットです。
機械学習プロジェクトでは、「機械学習・開発チーム」と「運用チーム」に分かれます。
機械学習モデルの開発・実装・運用までを滞りなく進めるには、各チームが密なコミュニケーションをとることが重要です。
しかし、実際は各チームで役割が違うので分断されてしまい、プロジェクトの進捗が遅れるケースもあります。
例えば、運用チームが機械学習モデルを監視中に、「予測結果にズレが生じた」ことに気付いたとしましょう。
速やかに原因を調査し、機械学習・開発チームにフィードバックしてモデルを改良してもらわなければなりません。
しかし、このとき調査に時間がかかったり、機械学習・開発チームへの連携が遅れたりした場合、モデルの改良そのものが遅れてしまいます。
その間もモデルの予測精度は落ち続けるため、最悪の場合、ビジネスに使われなくなる恐れもあります。
そこで、MLOpsの手法を取り入れることが有効です。「軽い修正で済む場合は、一部の工程をITツールで自動化する」ことで、問題発生からモデルの改良までを短縮できます。
軽微なモデルの改良を自動化する例 | |
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MLOpsを取り入れない場合 | MLOpsを取り入れる場合 |
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「機械学習モデルを作成したいが、チーム間の情報連携が課題」のように悩んでいる場合は、MLOpsを導入しましょう。
MLOps環境の実現に欠かせない2つのポイント
MLOps環境を実現する際は、次の2点を押さえておくことが欠かせません。
- 専用のITツールを導入する
- 運用を見据えて、データ活用環境を設計する
順番に説明します。
ポイント1. MLOps用のサービスを導入する
1つ目のポイントは、MLOps用のサービスを導入することです。
機械学習プロジェクトでは、膨大な学習データを集めたり、リソースが十分な実験用マシンを用意したりすることが欠かせません。
しかし、多くの企業は下記のような状況に陥っているのではないでしょうか。
- ・リソース不足のため、スムーズにプロジェクトが進められない
- ・技術面やコストの問題があり、社内だけで必要な環境を整えにくい
上記の場合、機械学習プロジェクト用に提供されているITツールを使うことで、負担を軽減して効率的にプロジェクトを進めやすくなります。
MLOps用サービスには、機械学習用のデータ管理やモデルの開発を始め、運用までおこなえるITツールが備わっています。
下記が代表的なサービスの一例です。
例えば、4つ目のDataRobotには、世界トップレベルのデータサイエンティストの知見が組み込まれています。
専門スキルがなくてもモデルをスピーディに作成できるため、業務に実装するまでの時間を短縮することが可能です。
弊社TDSEでは、「DataRobotを自社に導入してみたいが、具体的な活用方法がわからない」という方に向けて、DataRobot導入やサポートを実施しています。
DataRobotの14日間の無料トライアルもできますので、興味のある方は下記ページで詳細をご確認ください。
ポイント2. 運用を見据えて、データ活用環境を設計する
運用を見据えたデータ活用環境を設計することも、重要なポイントといえます。
上記を実施しないままいきなりMLOps環境を導入しても、属人的・ブラックボックス化したデータ分析を実施してしまいやすいです。
属人的・ブラックボックス化とは、例えば下記のようなケースです。
- ・特定の担当者だけがデータ分析を実施しており、ノウハウが偏っている
- ・通常業務が優先され、ノウハウの共有や引継ぎのための資料作成が後回しになる
- ・資料の作成後に情報が更新されないため、古くなり使えなくなる
- ・データ分析の担当者が退職した場合、分析やモニタリング業務が回らなくなる
そもそもデータ分析や機械学習モデルの監視を業務で回すには、時間も労力も多くかかります。
次第に業務優先になってしまい、ノウハウを共有したり引き継いだりする資料の作成が後回しになりがちです。
もし分析できる人材が退職や異動した場合、プロジェクトを進められる要員がいなくなる場合もあります。
そのため、担当者が変わることを考慮したうえで、「運用を見据えたデータ活用環境の設計」に取り組むことが欠かせません。
また、データ分析は事業部門だけで実施するケースが一般的です。しかし、事業部門だけでは属人化しやすくなるため、情報システム部門と連携して進めるのが理想といえます。
そこで弊社TDSEでは、情報システム部門と連携して、会社全体の資産になるような設計をサポートする「MLOps支援サービス」を提供しています。
- ・それぞれの事業部門や情報システム部門の要望をヒアリングし、資料化や資産化に落とし込むのをサポート
- ・MLOps環境の選定や基盤の設計、機械学習モデルの監視、改良を含めて一気通貫でサポート
第三者がフラットな目線で仲介することで、より両部門の連携をスムーズにおこなえるようになるのがメリットです。
サービスの詳細は下記のページで紹介していますので、興味のある方はぜひご一読ください。
MLOps環境を実現し、機械学習プロジェクトを成功させよう
機械学習モデルは、一度作成すれば終わりではありません。
予測結果の正確性を維持し、ビジネスの意思決定に活かすためにも、開発から運用までスムーズにおこなえるMLOps環境が重要です。
まずは、MLOps用サービスを利用し、運用を見据えたデータ活用環境を設計するところから始めましょう。