近年、ビッグデータやIoTなどのテクノロジーの進化により、データ活用の重要性が非常に高まってきています。
しかし、「データをビジネスに活かしたいけど、どこから手をつけたらいいかわからない」という企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、データ活用の現状やビジネスで上手に活かすポイント、具体的な事例について紹介します。
データ活用をするメリットがわかり、自社での活用イメージができるようになるので、ぜひ参考にしてください。
なお、「実際にデータ分析をするときの流れを知りたい」という方は、下記の資料をご覧ください。具体的なプロセスや考え方を紹介しています。
目次
データ活用とは?
データ活用とは、企業が収集したデータを分析し、業務改善や価値の創出などビジネスに役立てることです。
近年はIT化が進んだことで、デジタルデータが増加したため、データ活用の重要性が高まってきています。
例えば、小売業界では「顧客データ」や「気象データ」を活用し、売上予測をたてることが可能になりました。
企業のビジネスを成長させ、市場ニーズに対応するためにも、データ活用は必要不可欠といえます。
活用されているデータの種類
総務省の資料によると、下図のようにさまざまなデータが活用されています。
特に活用されているデータは、下記のとおりです。
- ・顧客データ
- ・経理データ
- ・POSデータ
- ・電子メール
- ・アクセスログ
- ・eコマースによる販売記録データ
- ・Blog、SNS等記事データ
とはいえ、活用すべきデータは、業界やビジネスモデルによっても異なります。
まずは、「自社にどのようなデータがあるのか」「どんなデータが必要なのか」を整理するところから始めることがおすすめです。
業界別のデータ活用状況
同じく総務省の資料によると、「業界別のデータを活用している領域」は下図のとおりでした。
業界ごとにデータ活用の割合を見てみると、下記の傾向があります。
- ・製造業:製品・サービスの企画、開発や生産・製造での活用が多い
- ・情報通信業:製品・サービス企画やマーケティング(商品が売れる仕組み作り)の活用が多い
- ・商業・流通業:マーケティングでのデータ活用が2番目に高い
- ・エネルギー・インフラやサービス業:データ活用状況は約60%で、他業界と比較すると低い
また、大手企業では90.9%と、ほとんどの大手企業がデータ活用していることが特徴です。一方、中小企業は55.6%に留まっているため、企業規模によって差があることがわかります。
データ活用の目的
総務省の資料によると、データ活用の目的は下記の8つです。
経営戦略や事業戦略に役立てることを始め、顧客ニーズの調査、業務効率化など幅広い目的があります。
実際にデータ活用に取り組むうえで、目的を明確にすることは非常に重要です。「どのような種類のデータを収集するか」に関わってくるため、自社なりの目的を定めるようにしましょう。
ここまでデータの活用状況や活用する目的を説明しましたが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
続いて、データ活用に取り組むメリットについて解説します。
データ活用に取り組むことで得られる3つの効果
データ活用をすることで、下記3つの効果が得られます。
- 業務効率が向上し、人材不足解消やコスト削減につながる
- 客観的なデータに基づいてスピーディーに意思決定できる
- 最適な施策を実施できるため、選ばれる可能性が高まる
順番に見ていきましょう。
効果1. 業務効率が向上し、人材不足解消やコスト削減につながる
1つ目の効果は、業務効率が向上し、人材不足の解消やコスト削減につながることです。
データを分析することで客観的な判断ができるようになるため、既存業務の無駄や問題点に気づきやすくなります。
例えば、小売業で「ダイレクトメッセージの送り先を選定する作業」でデータを活用したことで、選定の工数が削減された事例もあります。
無駄な作業コストをカットし、人材不足を解消できれば、従業員の負担を減らすことが可能です。結果的にモチベーションアップにつながり、離職率を下げる期待も持てます。
効果2. 客観的なデータに基づいてスピーディーに意思決定できる
客観的なデータに基づいてスピーディーに意思決定できることも、データ活用で得られる効果です。
さまざまなデータを収集して見える化することで、過去から現在に至るまでの出来事を、正確に把握できるようになります。
そのため、経験や勘に頼った主観的な判断ではなく、信頼性の高いデータに基づいて、速やかに施策を考案することが可能です。
例えば、NTTドコモでは「社内基幹システム」を導入したことで、経営状況のデータがリアルタイムにわかるようになりました。
参考: IT Leaders
このようにデータを活用することで、経営状況に適したアクションを起こしやすくなります。
効果3. 最適な施策を実施できるため、選ばれる可能性が高まる
3つ目の効果は、最適な施策を実施できるため、選ばれる可能性が高まることです。
「顧客データ・取引データ」や「アクセスログデータ」などを収集・分析することで、顧客のニーズや購買傾向を把握できます。
顧客を理解したうえで、下記のような戦略を実行できるため、「顧客から選ばれる可能性」を意図的に高められます。
- ・顧客一人ひとりに適したレコメンド
- ・タイミングの合ったコミュニケーション
選ばれることが増えればサービスの認知度が向上し、集客数アップにつながりやすいです。
データをビジネスで上手に活用する4つのポイント
単純にたくさんのデータを集めて分析しようとしても、思うような効果は得られません。
データをビジネスで上手に活用するには、下記4つのポイントを押さえることが大切です。
- データ活用の目的を決める
- 目的に合ったデータを収集する
- データ分析ができる人材を育成する
- 業務として回せるプロセス・仕組みを構築する
1つずつ見ていきましょう。
ポイント1. データ活用の目的を決める
まずは、データ活用の目的を決めましょう。
データ活用は「経営課題を解決する手段」のひとつに過ぎません。つまり、企業が「データを活用して、どのような課題を解決したいか」によって、収集するデータは変わります。
例えば、目的が「経営戦略や事業戦略の策定」の場合、売上データなどの社内情報に加えて、社外のデータが必要になることもあります。
このように、ビジネスで解決したい課題を洗い出し、課題に応じてどのような目的を設定するか決めましょう。
ポイント2. 目的に合ったデータを収集する
次に、目的に合ったデータを集めましょう。
そもそもデータ量が不足していると十分な予測ができません。また、データ活用の目的に合わないデータばかり大量に集めても、ビジネスに活かすことは不可能です。
例えば「顧客や市場の調査」が目的なら、消費傾向を分析するため「顧客データ」や「SNSへの書き込みデータ」などが必要です。
社内データに限らず、外部のデータを活用する場合もあるので、目的にあったデータを収集しましょう。
ポイント3. データ分析ができる人材を育成する
データを収集したら分析に移りますが、データ分析や活用をするには専門スキルが必要です。
データを収集しても適切に分析ができないと、ビジネスに活かすことはできません。また、「データを活用して、何を成し遂げたいのか」によっても、必要な人材は変わります。
例えば、「商品の売上予測」をしたい場合、「統計学」や「機械学習」に関する深い知見のある人材が欠かせません。
社内だけでリソースが足りないなら、外部の研修や講師を活用することも検討しましょう。
ポイント4. 業務として回せるプロセス・仕組みを構築する
データ活用により価値を創出できるとわかったら、業務として回せるプロセス・仕組みを構築していくことが重要です。
どれだけ有効なデータを集めても、データ活用を仕組み化できなければ、「良いデータだね」で終わってしまうケースもあります。
また、既存のやり方にデータ活用を組み込んだ場合、特定の従業員にだけノウハウが蓄積されてしまうことも問題です。
具体的には、データ活用のシステムを導入し、人を介さなくても進められるようにしましょう。
ここまでしっかりやり切ることが、データ活用の価値を最大化するうえで重要なポイントです。
なお、弊社TDSEではプロセスや仕組みの構築を含めて、データ活用の支援をしています。
「自社のビジネスでデータ活用を取り入れたいが、どうやって進めれば良いかわからない」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。
【業界別】データ活用に取り組んだ3つの事例
ここでは「データ活用に取り組んで成功をした企業」の事例を、総務省の資料から3社紹介します。
- 【製造】株式会社資生堂:172%効率化に成功
- 【小売】株式会社マルイ:機会損失を防止し売上が2割アップ
- 【社会インフラ】東京ガス株式会社:災害復旧の効率化を実現
他社の事例を知ることで、データ活用の具体的なイメージが湧きやすくなります。順番に見ていきましょう。
事例1. 【製造】株式会社資生堂:172%効率化に成功
1つ目の事例は資生堂です。
資生堂は、マーケティング(商品が売れる仕組みを作ること)施策の立案から、効果を検証して要因を導き出すまでのプロセスを効率化したいと考えていました。
そこで「Web上での行動履歴」などのデータを活用して下記の施策を実施しました。
データ活用の目的 | マーケティング施策の効率化 |
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施策 | ・Web上の行動履歴や店舗での販売履歴などを分析し、マーケティング施策に活用した ・顧客アプローチのパターンを複数作成し、同一環境でA/Bテストを実施した |
効果 | 半年間で理論上172%効率化を達成した |
結果的に172%効率化することに成功し、今後は新しいデータ活用方法を見つけることに取り組んでいます。
事例2. 【小売】株式会社マルイ:機会損失を防止し売上が2割アップ
マルイは「機会損失の防止」や「経験・勘に頼らない発注」をするため、データ活用に取り組んでいます。店舗の売上、在庫情報、カード会員などのデータを用いて下記の施策をおこないました。
データ活用の目的 | ・機会損失の防止 ・経験や勘に頼らない発注 |
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施策 | ・ツールを導入し、多様なデータを一元管理できる環境を構築した ・競合対策のマーケティング施策を、データに基づいて素早く実施した ・店舗の販売データから、各商品の売れ行きをリアルタイムに把握できるようにした |
効果 | ・店舗によっては売上が2割アップした ・粗利率は4店舗平均で7~8%向上した |
結果として、店舗によっては売上が2割アップ、粗利率も4店舗平均で7〜8%向上しました。
さらに、すべての店長にタブレットを配布したり、教育専門の部隊を設置したりするなど、データに基づく施策を打てる体制作りを進めています。
事例3. 【社会インフラ】東京ガス株式会社:災害復旧の効率化を実現
3つ目の事例は、東京ガスです。東京ガスは「顧客に提供する付加価値を拡大し、災害復旧を効率化する」ことがデータ活用の目的でした。
顧客データや商品データ、作業データなどを活用して、下記の施策を実施しています。
データ活用の目的 | ・顧客に提供する付加価値の拡大 ・災害復旧の効率化 |
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施策 | 顧客データや商品データを活用するシステムを導入した |
効果 | ・市場の変化や営業状況をスピーディーに把握できるようになり、PDCAサイクルの高度化や短縮化を実現した ・災害復旧を支援するシステムを開発し、災害復旧の効率化を実現した |
結果的に、顧客に価値を提供する施策の検討や、災害復旧を効率的におこなえるようになりました。
【業界別】TDSEで実施したデータ活用の6つの事例
TDSEで実施したデータ活用の事例を、業界別に6つ紹介します。
- 【小売・流通】物流予測をすることで脱属人化、自動化へ
- 【製造】検査工程の改善・自動化でコスト削減
- 【保険】データドリブンによる営業活動の効率化
- 【保険】健康デバイスを用いた新商品開発
- 【社会インフラ】ディープラーニングの活用でコスト削減
- 【小売】需要予測
順番に見ていきましょう。
事例1. 【小売・流通】物流予測をすることで脱属人化、自動化へ
1つ目の事例は、小売・流通業界です。
「車両管理を最適化する」という目的のために配送拠点間の物流量データを活用し、下記の施策を実施しました。
データ活用の目的 | 車両管理の最適化 |
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施策 | 「配送拠点間の物流量データ」と「曜日・休日・年末年始などのイベント要因」を考慮し、AIモデルを構築した →「起点日から1ヶ月後まで」の物流量を予測できるようにした |
効果 | ・AIモデルによって物流量を予測し、トラックの配備数を効率的に算出できるようになった ・物流量の予測が完全自動化したため、属人化を排除できた |
結果的に、必要なトラックの数を効率的に算出できるようになり、物流量の予測も完全自動化されました。
なお、具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
事例2. 【製造】検査工程の改善・自動化でコスト削減
続いての事例は、製造業です。「検査設備への投資を抑える」という目的のためにデータを活用し、機能検査や検査結果をAIで予測できるようにしました。
データ活用の目的 | 複数回実施している機能検査の回数を減らし、検査設備への投資を抑える |
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施策 | 1回目の検査の情報を使って、2回目の検査結果をAIで予測できるようにした |
効果 | ・検査工程のスループットが、25%~50%程度向上した ・数億円程度の設備投資を削減することが期待される |
結果として、数億円程度の設備投資を削減できる期待が持てました。具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
事例3. 【保険】データドリブンによる営業活動の効率化
3つ目の事例は保険業界の営業活動の効率化です。
「効率的に営業活動をしていきたい」という目的があり、契約データや支払いデータ、外部データなどを活用して下記を実施しました。
データ活用の目的 | ・資料作成や営業ノウハウの属人化 ・経験や勘に頼った営業活動 |
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施策 | ・データサイエンティストがデータ分析し、ツールで可視化するフローを構築した →各種データを資料作成に活かし、営業活動を効率化した ・「資料作成のマニュアル」を作成し、資料作成用の研修を実施した |
効果 | ・過去に比べて効率的な営業活動ができるようになった ・属人化が低下し、新入社員の提案効率が改善した |
データ活用により営業効率がアップし、属人化の低下や新人の提案効率の改善につながりました。具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
事例4. 【保険】健康デバイスを用いた新商品開発
4つ目の事例は、保険業界での健康デバイスを用いた新商品開発です。
「健康状態を改善する新サービスの開発」という目的のため、契約データや支払いデータ、外部データなどを活用しました。
データ活用の目的 | 新サービスの開発 |
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施策 | ・「健康診断結果の検査項目」と「ウェアラブル端末(身につけられる端末)で取得したデータ」との関係をAIモデル化した ・生活行動習慣が健康に与える影響を推定した |
効果 | 新たなサービス・商品開発につながる示唆が得られた |
上記を実施することで、どのような生活習慣が健康状態を改善できるかがわかり、新たなサービス開発に活かしやすくなりました。具体的な施策は図にしていますので、ご確認ください。
事例5. 【社会インフラ】ディープラーニングの活用でコスト削減
続いての事例は、社会インフラ業界でコスト削減に成功した事例です。「検査コストの削減」や「検査の効率化」のため、画像データを活用して下記の施策を実施しました。
データ活用の目的 | ・目視による検査のコスト削減 ・検査の効率化を改善 |
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施策 | ・画像データから異常/正常を判断するAIモデルを構築した ・ヘリやドローンで撮影した画像データをAIモデルへ取り込むことで、異常を見える化した |
効果 | ・人による目視確認のコストを削減した ・点検作業にかかる時間を50%削減した |
点検作業の時間を50%削減するなど、作業員の負担削減やコストカットに成功しました。具体的な施策は図にしていますので、ご確認ください。
事例6. 【小売】需要予測
最後は小売業界の需要予測の事例です。店舗の在庫管理や生産計画の属人性が高いため、自動化したいと考えていました。
そこで「商品ごとの過去の売上データ」などを活用し、下記の施策を実施しています。
データ活用の目的 | ・店舗の最適な在庫管理 ・最適な生産計画の立案 |
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施策 | 「商品ごとの過去の売上」や「外部データ」を使用し、複数のAIモデルを構築した →より精度の高いモデルで需要を予測できるようにした |
効果 | ・売上に基づいて、日時や月次の需要を予測できるようになった ・不要な在庫を減らすことで、過剰生産が抑えられた |
精度の高い需要予測ができるようになったことで、過剰生産が抑えられ、適切な在庫管理が可能になりました。
具体的な施策は図にしていますので、ご確認ください。
データ活用に取り組んで、自社の課題解決を目指そう
近年はデータ活用の重要性が増しているため、あらゆる企業で業務効率化や新しい価値の創出が進むと考えられます。
データ活用は経営に大きなインパクトがあり、今後も企業の成長に欠かせないものなので、ぜひ取り組んでみましょう。
なお、データを活用する際は、「具体的な進め方」や「どのような手法が使われるのか」を知っておくことが大切です。
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