近年はPOSデータを活用して、在庫の削減や需要予測などをする企業が増えており、POSデータの重要性が高まっています。
しかし、「POSデータを活用して自社のビジネスに活かしたいけど、活用方法がわからない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、POSデータをビジネスに活用する事例や分析方法を詳しく紹介します。POSデータを活用して売上アップへつなげるためにも、ぜひ最後までご一読ください。
なお、「データ分析の流れや手法を知りたい」という方向けに、分析プロセスや手法をまとめた資料をご用意しました。
下記から無料でダウンロードしていただけますので、ぜひお役立てください。
目次
そもそもPOSデータとは?
POSとは、Point of Sales Dataの略称で、販売時点情報のことを指します。
POSデータとは、POSレジ(会計機能に加えて、商品や売上データの管理・分析ができるシステムを搭載したレジ)によって自動的に収集されたデータのことです。
小売店などで販売された商品の情報を収集するために活用されています。次のようなPOSデータが一例です。
・購入した商品名
・商品の価格
・商品の数量
・購入日時
・支払い方法
・購入時の店舗情報
リアルタイムにデータを管理できるので、在庫管理や購買行動の把握などに活かすことができます。
近年では、ID-POSデータ(顧客に紐づいているPOSデータ)も注目されています。ID-POSデータとは、TカードやPontaなどのポイントカード・会員カードから取得できるデータです。
注意点としては、ポイントカードや会員カードを使っていない人からはデータを取ることができません。無人店舗(Amazon Goなど)の場合は入店時に必ずカードが必要になるため、データを取得することが可能です。
ID-POSデータが主流になってきているので、あわせて収集を検討してみましょう。
なお、POSデータをビジネスに活用するには、どのような活用方法があるのかを知っておく必要があります。続けて説明しますので、ぜひ参考にしてください。
POSデータをビジネスに活用する3つの例
ここでは、POSデータをビジネスに活用する例を3つ紹介します。
- 販売促進の施策を実施した後に、効果を測定する
- 在庫管理を最適化して損失を防ぐ
- 需要予測の精度を高めて、売上アップにつなげる
順番に見ていきましょう。
活用例1. 販売促進の施策を実施した後に、効果を測定する
1つ目は、販売促進の施策を実施した後に、効果を測定する活用例です。「販売量」や「販売金額」などのPOSデータに注目することで、施策を実施する前後の変化を把握できます。
例えば、以下のように活用するイメージです。
- 1. 商品Aに対して、キャンペーンを実施する
- 2. 期間中の販売量や販売金額が、POSデータとして蓄積される
- 3. 施策を実施した結果を、前後で比較する
施策の成功・失敗を実データに基づいて判断できるため、施策の改善や戦略の見直しを効率的におこなえます。
活用例2. 在庫管理を最適化して損失を防ぐ
在庫管理を最適化して、損失を防ぐ活用例もあります。POSデータを蓄積するPOSシステムでは、在庫情報をリアルタイムに把握することが可能です。
在庫数が少なくなったら発注をかけられるため、在庫切れによる機会損失を防ぎやすいです。
・過去の販売履歴から在庫状況を最適化し、在庫過剰や欠品を防ぐ
・リアルタイムの在庫状況を見える化する
・仕入れ量を調整することでロスをなくし、コスト削減につなげる
POSデータを活用して在庫過剰や欠品を防ぎ、適切な在庫管理を実現させましょう。
活用例3. 需要予測の精度を高めて、売上アップにつなげる
3つ目は、需要予測の精度を高めて売上アップにつなげる活用例です。商品名や数量、日時といった販売実績データをもとに、需要を予測できます。
店舗のなかには、商品の発注業務が自動化されておらず、経験や勘で発注するケースもあります。適切な量を準備できなければ、購入機会の損失や廃棄ロスは免れません。
POSデータを活用して予測精度を高めることで、需要と供給のバランスが取りやすくなり、在庫の過剰や不足を防げます。
例えば、日時や時間帯別の売上からトレンドや季節性を把握し、発注量を調整するなどです。
販売データ以外の外部データ(気象データ・祝日・イベントなど)も活用することで、さらに予測精度を高められます。
ここまでPOSデータの活用例を紹介しましたが、実際にどのような分析手法を使えば良いのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
続いて、POSデータの活用に必要な分析手法を紹介します。
POSデータの活用に必要な4つの分析手法
POSデータの代表的な分析方法は、次の4つです。
- ABC分析:売れている商品・売れていない商品がわかる
- トレンド分析:商品の適切な販売時期がわかる
- バスケット分析:セットで購入されやすい商品がわかる
- RFM分析:顧客をグループ分けし、適した施策がわかる
それぞれのメリットや具体例を交えて説明します。
手法1. ABC分析:売れている商品・売れていない商品がわかる
1つ目の手法はABC分析です。
ABC分析では、最初に「売上高」「コスト」「在庫」などの評価軸を決めます。その後、重要度や優先度順に、「A・B・C」の3つにグループ分けをする手法です。
例えば、売れている商品は発注量を増やし、売れていない商品は発注量を減らすなどの発注量を調整しやすくなります。
また、ABC分析を用いて実態に即した経営戦略を立てることも可能です。
手法2. トレンド分析:商品の適切な販売時期がわかる
トレンド分析も、POSデータを活用する際に使われる分析手法です。商品販売数を時系列で分析することで、「いつの時期に商品を販売すると効果的か」を把握できます。
具体的には、「商品Aは冬にかけて販売数が増え、2月がピークになる」といった知見を得るなどです。ニーズが高まる時期に適切な量の商品を発注することで、在庫量を調整できるのがメリットです。
トレンド分析をおこない、適切なタイミングで在庫管理をしましょう。
手法3. バスケット分析:セットで購入されやすい商品がわかる
3つ目の手法はバスケット分析です。バスケット分析とは、セットで購入されやすい商品がわかる分析手法です。
例えば、「冬に鍋の素を購入した人は、鍋の具材も購入する傾向がある。だから並べて陳列しよう」などの施策を導き出せます。
陳列棚を変更したり、お得なセットで販売したりすることで、消費者の購買意欲をより高められます。バスケット分析を実施し、顧客に商品を購入してもらいやすい店づくりをしていくことが可能になります。
手法4. RFM分析:顧客をグループ分けし、適した施策がわかる
RFM分析は、下記の指標をもとにPOSデータを分析する手法です。
・直近の購入日(Recency)
・購入頻度(Frequency)
・累積金額(Monetary)
RFM分析を活用することで、顧客の特徴に合わせて、効果的に販売を促進する施策を打ちやすくなります。例えば、次のような顧客AとBがいたとしましょう。
・顧客A:10年前に50万円の商品を購入している
・顧客B:毎日1,000円の商品を、500回以上購入している
顧客Aは高額な商品を購入しているものの、10年前とかなり昔のことです。顧客Bのほうが「直近の購入日」や「購入頻度」が高いため、Aよりも上のランクに属します。
このようにRFM分析をして、優良顧客やリピーターを可視化し、適切なアプローチをしましょう。
POSデータを分析・活用して売上アップにつなげる4つのコツ
POSデータを分析・活用して売上アップにつなげるには、下記4つのコツを押さえましょう。
- POSデータを活用する目的を決める
- 複数のデータを組み合わせて多角的に分析する
- 分析後は施策に落とし込んで実行する
- 継続的にデータをモニタリングする
順番に説明します。
コツ1. POSデータを活用する目的を決める
1つ目のコツはPOSデータを活用する目的を決めることです。POSデータの分析手法は4つあり、在庫量の最適化や売上アップなど、それぞれ異なる知見を得られます。
適切な手法を取り入れるためにも、まずは「POSデータを分析して何をしたいのか?」という目的を明確にしましょう。
「廃棄コストが負担になっているため、適切な在庫量に調整したい」のであれば、トレンド分析で需要が高まる時期を見定めるなどです。
後々データ活用の方向性に悩まないようにするためにも、まずは目的を決めることから始めましょう。
コツ2. 複数のデータを組み合わせて多角的に分析する
複数のデータを組み合わせて多角的に分析することも、押さえるべきコツです。POSデータの種類は限られているため、得られる知見には限界があります。
他のシステムから得られるデータや、社内に蓄積したデータなどと組み合わせて分析することも大切です。例えば、「POSデータ」と「ソーシャルメディアのデータ」を組み合わせるなどです。
「今週、商品Aの売上が急増した」という事象が起きた場合、ソーシャルメディアのデータも見ることで、「インフルエンサーがおすすめしてバズっていた」のように気付けます。
逆に、「店舗の売上が急に落ちたと思ったら、SNSで炎上していた」などがわかれば、すぐにアクションを起こして沈静化へつなげることも可能です。
このように、POSデータだけでは気付かない事象も、複数のデータを組み合わせることで多角的に分析できます。
もしソーシャルメディアデータも活用したい場合、ソーシャルリスニングツール「NetBase」がおすすめです。SNSや口コミのデータをリアルタイムに分析し、市場・競合調査からリスク対策まで幅広く活用できます。
TDSEでは、NetBaseの導入から課題を解決するところまでサポートしていますので、ぜひこちらから資料をご覧ください。
コツ3. 分析後は施策に落とし込んで実行する
データ分析後は施策に落とし込み、実行することも重要です。
行動に移さないままでは、データを分析することや、ツールを入れて使いこなすこと自体が目的になってしまいます。
そのため、データ分析をした後の施策まで設計・実行できるようにしましょう。
例えば、「RFM分析をした結果、購入日や購入頻度の高い優良顧客がわかった」なら、新商品やキャンペーンのお知らせをするなどです。
施策を実施した後は、必ず効果を検証して次に活かしてください。
コツ4. 継続的にデータをモニタリングする
4つ目のコツは、継続的にデータをモニタリングすることです。
一般的に分析する際は、集めたデータだけで分析しがちですが、それでは「その瞬間の結果」からしか知見を得られません。
「分析をしようとしたタイミング以降」のデータも見て、差分がないかを確認しましょう。
「2023年5月に、直近1年のデータ」を分析した場合は、「2023年8月に、2023年5月~7月」のデータも分析するなどです。
場合にもよりますが、データ分析の期間は、日単位・週単位など短ければ短いほど効果があります。
購買者の行動は、日単位・週単位などのスパンで変化するからです。特に日本は四季があるので、季節によっても顧客行動は変わります。
もし短期間のスパンで分析するのは難しい場合は、3ヶ月単位で実施するのがおすすめです。小さな変化に気付けるよう、継続的にデータをモニタリングしましょう。
POSデータを分析・活用した4つの事例
ここからは、POSデータを分析・活用した4つの事例を紹介します。
- ダイナミックプライシングを実施し、利益を最大化
- DMの送付者を選定し、開封率アップを実現
- 営業利益をシミュレーションし、新規出店の計画策定が可能に
- 商品の需要を予測し、不要な在庫を削減
事例を参考にして、自社で活用するイメージを膨らませてみましょう。順番に紹介します。
事例1. ダイナミックプライシングを実施し、利益を最大化
1つ目は、ダイナミックプライシング(需要に応じて商品価格を変動させること)を実施し、利益を最大化した事例です。
廃棄商品を減らすため、スーパーなどの商品値下げを調整したいという要望がありました。そこで次の施策を実施しました。
データ活用の目的 | 商品の価格を最適化する |
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施策 | ・購買データと商品の在庫状況をもとに機械学習を構築した ・各自国での売上を予測し、利益が最大化するようにダイナミックプライシングを実施した |
効果 | ・適切な値下げ幅を算出し、利益を最大化できた ・担当者の経験と勘に頼らない値下げが可能になった |
客観的なデータに基づいた値下げができるようになり、廃棄を抑えて利益を増やすことに成功しました。具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
事例2. DMの送付者を選定し、開封率アップを実現
DM(ダイレクトメッセージ)の送付を最適化した事例もあります。顧客にキャンペーンのDMをする際、対象者を選ぶ作業が属人化しているという問題がありました。
また、DMの開封率が低いこともあり、下記の施策を実施しました。
データ活用の目的 | ・属人性を解消する ・DMの開封率を向上させる |
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施策 | ・顧客が商品を購入する可能性をスコアリングした ・購入可能性の高い顧客に限定して、DMを送付する運用にした |
効果 | ・営業担当者がDM送付者を選定する工数を削減した ・DMの開封率がアップし、商品の購買率が向上した |
特定の営業担当に頼らないで送付者を選定できるようになり、DMの開封率もアップしています。具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
事例3. 営業利益をシミュレーションし、新規出店の計画策定が可能に
3つ目は、営業利益をシミュレーションし、新規出店の計画策定が可能になった事例です。
高い売上が見込めるかどうかを事前に把握したうえで、新規出店をしたいという要望がありました。そこでTDSEでは、以下の施策を実施しています。
データ活用の目的 | 最適な出店先を見つける |
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施策 | ・過去3年分の地域別の店舗経営データをもとに、売上額予測モデルを作成した ・地域ごとに営業利益をシミュレーションした |
効果 | ・出店実績と店舗売上から、地域ごとの予測営業利益額を算出できた ・予測営業利益額から、新規出店の計画を策定できるようになった |
最終的に売上が期待できる地域を見つけ、出店計画を立てることに成功しました。具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
事例4. 商品の需要を予測し、不要な在庫を削減
最後は商品の需要を予測し、不要な在庫を削減した事例です。次の目的のため、商品ごとの過去の売上や外部データを活用して、予測モデルを作成しました。
データ活用の目的 | ・店舗の最適な在庫管理をする ・最適な生産計画を立案する ・生産計画を自動化し、属人化を防ぐ |
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施策 | 商品ごとの過去の売上や外部データを使用し、予測モデルを作成した →より精度の高いモデルで予測をおこなった |
効果 | ・売上に基づいて、日時・月次の需要を予測できるようになった ・不要な在庫を減らし、過剰生産を防げるようになった |
結果的に需要予測が可能になり、過剰生産や廃棄ロスを減らすことにつながっています。具体的な施策や効果などは図にしていますので、ご確認ください。
POSデータを分析・活用して売上アップへつなげよう
本記事ではPOSデータの活用例や分析手法、売上アップにつなげるコツを紹介しました。
POSデータを分析・活用して顧客のニーズをつかみ、在庫最適化や生産性向上をすることが欠かせなくなっています。
まずはPOSデータを活用する目的を決めて、適切な方法で分析し、自社のビジネスに活かしていきましょう。
なお、データ分析に着手する前に考慮すべきことはたくさんあります。あらかじめ知っておくことで、スムーズに進められる可能性が高いです。
TDSEでは、分析プロセスや手法をまとめた資料をご用意しました。ぜひ下記から資料を無料ダウンロードのうえ、お役立てください。