多くの企業で蓄積したビックデータを分析し、事業戦略に役立てる動きが加速しています。自社の競争力を高めるには、データの活用が欠かせません。
しかし、「データ分析とはどういうものか、あまりイメージが湧かない」という方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、データ分析のメリット・デメリットや実際の進め方、分析で押さえるべきポイントを解説します。
なお、「先にデータ分析のプロセスや手法について詳しく知りたい」という方向けに、詳しくまとめた資料をご用意しました。
下記から無料でダウンロードしていただけますので、ぜひお気軽にご覧ください。
目次
データ分析とは?
データ分析とは、さまざまな方法で膨大なデータから適切なデータを抽出・収集・整理・加工し、分析することです。
分析した結果から得られる知見をもとに戦略を立てることができるため、長年の経験や勘ではなく、客観的なデータに基づいて意思決定ができます。
近年は次のような背景により、データ分析の必要性が高まっています。
・消費者のニーズが多様化したため、経験や勘に基づいた判断では通用しなくなった
・競争が激化したため、自社の課題を明確にしてスピーディーに戦略を立案・実行することが重要になった
競合他社と差を付けて、消費者に選ばれる可能性を高めるためにも、データ分析に取り組むことが欠かせません。
分析に利用されるデータの種類
次に、どのようなデータが分析に使われるかを見ていきましょう。総務省の調査によると、下図の赤枠内のデータが活用されてきています。
出典:総務省|デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負報告書
なかでも過去に比べて伸びているのが、下記3種類のデータです。
・アクセスログ
・POSデータ(商品や売上データを管理・分析できるシステムによって収集されたデータ)
・eコマースにおける販売記録データ
例えば小売の領域では、POSデータを分析して在庫過剰を防ぐことや、需要予測の精度を高めて売上アップにつなげる活用例があります。
以上のようにさまざまな種類のデータがあるため、自社のビジネスや目的に合ったデータを集めることが大切です。
では、実際にデータ分析に取り組むとどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
データ分析に取り組む3つのメリット
データ分析に取り組むことで得られるメリットは、主に以下の3つです。
- 市場ニーズの変化に合わせて、迅速な意思決定ができる
- 現状が見える化するため、取るべきアクションがわかる
- 個人レベルの分析により、顧客満足度アップにつながる
順番に解説します。
メリット1. 市場ニーズの変化に合わせて、迅速な意思決定ができる
1つ目のメリットは、市場ニーズの変化に合わせて迅速な意思決定ができることです。従来は多くの企業で、人の勘や経験に依存した意思決定や戦略がおこなわれてきました。
ししかし、主観の入った戦略では合理性に欠けてしまいます。市場ニーズに合わない戦略を実行してしまい、商機を逃す恐れがあります。
その一方で、データ分析は仮説を立案し、検証結果をもとに戦略を立案していくため、精度の高い意思決定が可能です。
メリット2. 現状が見える化するため、取るべきアクションがわかる
現状が見える化するため取るべきアクションがわかる点も、メリットのひとつです。
BIツール(データを分析・可視化するツール)などを利用することで、分析結果をグラフやチャートで確認できます。
過去から現在に至るまでの出来事を正確に把握できるうえ、今まで気付かなかった課題を明確にすることも可能です。
例えば、「リピート顧客向けの施策ばかり実施しており、新規顧客が増えていない。今後は初回購入者向けの施策も考えたほうが良いのではないか」などです。
このように今の状態を見える化することで、実施すべき施策や注力すべき業務などが見えてきます。
メリット3. 個人レベルの分析により、顧客満足度アップにつながる
3つ目のメリットは、個人レベルで分析できるため顧客満足度アップにつながることです。
データ分析を実施する際は、顧客の属性や購買履歴、価値観、ライフスタイルといったさまざまなデータを扱います。
「顧客がどのような行動を取ったのか」「キャンペーン施策に対して、どんな反応を見せたのか」などを分析できるため、顧客一人ひとりに合った改善施策を導き出せます。
また、潜在ニーズを把握してサービスの開発や改善に活かせるため、顧客満足度の向上につながり、自社が選ばれる可能性が高まります。
データ分析に取り組む2つのデメリット
一方で、次のようなデメリットがあることも見逃せません。
- データ分析をする人材の負担が大きくなる
- 分析結果が価値のあるものになるとは限らない
順番に見ていきましょう。
デメリット1. データ分析をする人材の負担が大きくなる
1つ目のデメリットは、データ分析をする人材の負担が大きくなることです。データ分析をするには、データの収集・加工・蓄積・統合・分析・可視化など複数の工程があります。
さらに、ビジネス力やデータサイエンス力といったスキルも必要になるため、特定の人材に属人化しやすいです。
そのため、下記を実施して、誰でもデータを活用できる環境を用意しましょう。
・BIツール(効率的にデータを可視化・分析できるツール)を導入する
・データ活用基盤(データを一元管理できるシステム)を導入する
なお、データ活用基盤の機能や導入方法は、下記の記事で解説しています。自社に合った基盤を選ぶポイントも紹介しているので、ぜひお役立てください。
データ活用基盤の基礎知識!得られる効果や構築方法を詳しく解説
デメリット2. 分析結果が価値のあるものになるとは限らない
分析結果が価値あるものになるとは限らないことも、デメリットといえます。
どれだけ時間をかけて分析レポートを作成しても、どうやって業務や課題解決に活かせば良いのかわからないケースもあります。
このような場合の多くは下記が原因です。
・データを分析する目的が明確になっていない
・目的に合ったデータを収集できていない
・適切な分析手法を選んでいない
そのため、まずは自社の課題をもとにデータ分析の目的を決めましょう。そのうえで必要なデータを集めて分析手法を選ぶことで、分析結果から知見を得られる可能性が高まります。
また、分析結果はほかの従業員にも確認してもらい、客観的な目線で評価できるようにするのも大切です。
それでは、実際にどのように分析を実施すれば良いのか、具体的に紹介します。
データ分析を実施するまでの4ステップ
データ分析を実施する際は、次のような流れで進めましょう。
- データ分析の目的を設定する
- 仮説を立てる
- データを収集・分析する
- 分析結果をもとにアクションを起こす
順番に説明します。
ステップ1. データ分析の目的を設定する
まずは、データ分析の目的を設定しましょう。目的を事前に設定しておかないと、不要なデータを収集してしまう無駄が発生し、期待していたアウトプットを出せないケースがあります。
目的のためにデータを分析するのであり、データを分析自体が目的とならないようにすることが大切です。
そのためには、「データ分析で知りたいことは何か」「何を達成するためにデータを分析するのか」について、関係者間で認識合わせをしましょう。
以下のようなイメージです。
・課題:顧客へ商品を届けるまでのリードタイム(所要期間)が長い
・データ分析の目的:顧客へのリードタイムが長い原因を探る
このように決めることで、必要なデータの種類や分析手法を洗い出しやすくなります。
ステップ2. 仮説を立てる
次に、目的を実現するための仮説を立てましょう。仮説はたくさん出てくる場合も多いですが、すべての仮説を検証するのは非効率です。
そのため、仮説に優先順位をつけて、一番優先度の高いものから検証することをおすすめします。
例えば、「顧客へ商品を届けるまでのリードタイムが長い」という課題がある場合、次の仮説を立てられます。
・部品の納入が不安定なため、部品調達の調整期間が長い
・製品の製造装置が老朽化しているため、生産に時間がかかっている
・物流業者の集配頻度が少ないため、発注から納品までに時間がかかっている
「発生頻度の件数や金額換算をしたときに、影響度の高い仮説を選ぶ」など仮説を選ぶ基準を設定し、1つに絞り込みましょう。
ステップ3. データを収集・分析する
仮説を立てた後は、データの収集・分析に移ります。データを収集する際は、下記に注意しましょう。
・どのようなデータが必要なのか、どこにデータがあるのかを把握・管理しておく
・収集したデータの形式や加工方法が人によってバラバラにならないよう、事前にルールを統一しておく
特に部署や部門ごとで管理していると、人によってデータの管理にバラつきが出やすいです。事前にルールを周知しておき、一定の品質に保てるようにする必要があります。
また、データの分析手法はたくさんあるため、目的に合った手法を選びましょう。下記が分析手法の一例です。
・記述的分析:過去の事象を分析してグラフや表に落とし込み、問題の解決策を見出す
・予測的分析:過去のトレンドをもとに、今後起こる可能性が高い事象を判断する
例えば、「部品の納入リードタイムが長いことが原因で、顧客へ商品を届けるまでに時間がかかる」場合を考えてみましょう。
次のようなデータを収集してグラフ化することで、「どの仕入れ先にどれくらいリードタイムを削減してもらえば良いか」が見えてきます。
- 1.どの仕入れ先で、どの商品が、どの程度の日数遅れて納入されているのかがわかるデータ
- 2.1に対し、実際にかかった調整時間(残業時間)のデータ
ステップ4. 分析結果をもとにアクションを起こす
データを分析して終わりではなく、分析結果もとに打ち手を立案して実行しましょう。得た知見をビジネスに役立てなければ、データを活用しているとはいえません。
打ち手を立案する際は、「誰が、いつまでに実行するのか」「アウトプットは何か」まで具体的に落とし込むことが大切です。
ステップ3の事例の場合、まずは仕入れ先と現状について認識を合わせたうえで、リードタイムの短縮が実現可能かどうかを調整していく必要があります。
実際にアクションを起こした結果、どのような効果が得られたのか検証することも重要です。
想定どおりにいった場合も失敗した場合も、分析プロセスのどこが良かったのか・間違いがあったのかなどを評価しましょう。
この評価がしっかりできていれば、次回の分析に役立てられます。
データ分析で押さえるべき4つのポイント
データ分析を実施する際は、下記4つのポイントを押さえましょう。
- 必要なデータを把握し、適切に管理する
- ツールを利用して分析を効率化する
- 分析後は施策に落とし込んで実行する
- 仮説とアクションを設定してから分析する
順番に説明します。
ポイント1. 必要なデータを把握し、適切に管理する
明確にした目的に応じて必要なデータを把握し、そのデータがどこにあるのかを確認・管理していく必要があります。
例えば、「仕入れ先に対して、部品の納入リードタイムを削減するアクションを起こしたい」場合は、次のようなデータが対象です。
・納入実績日数
・仕入れ先一覧リスト
・対象商品
上記のデータの保管場所や、そもそも収集できるのかを確認しておきましょう。
また、「必要なデータ」と「ノイズとなるような不要なデータ」のクレンジング(データの誤りなどを修正し、品質を向上させること)も大切です。
クレンジングをしっかりしておかないと、期待どおりの結果を得ることができません。ただし、ノイズデータのクレンジングは、スキルを持った人材が必要な業務です。
社内にデータをクレンジングできる人材がいない場合は、アウトソーシングも検討してみてください。さらに、どれが最新データかすぐにわかるよう、収集したデータは一ヶ所に蓄積しておきましょう。
ポイント2. ツールを利用して分析を効率化する
2つ目のポイントは、ツールを利用して分析を効率化することです。データ分析のプロセスには収集から分析まであり、多くの時間がかかります。
BIツールなどを導入することで、分析業務を大幅に短縮できます。結果的に効率良くPDCAサイクルを回せるため、競合他社の先手を打てる可能性が高いです。
いろいろなBIツールがありますが、特に「Tableau」がおすすめです。専門知識が少ない人材でも直感的に操作できるので、結果から知見を得やすくなります。
TDSEでは、Tableauの活用をサポートするサービスを提供しています。
導入から実際にアクションにつなげるところまで支援しますので、気になる方はお気軽に下記から資料をご覧ください。
ポイント3. 分析後は施策に落とし込んで実行する
分析後は施策に落とし込み、実行することもポイントのひとつです。昔はデータ分析だけして施策に落とし込まない、という失敗事例が多くありました。
「データ分析がトレンドらしいから取り組んで欲しい」と上司から言われ、そのままそれがタスクになってしまうパターンです。
分析することや、ツールを入れて使いこなすこと自体が目的になってしまっては、いつまでもデータを活用できません。
そのため、「○○という知見を得られたから、ターゲット層にキャンペーン施策を実施してみよう」など、行動につなげましょう。
ポイント4. 仮説とアクションを設定してから分析する
4つ目のポイントは、仮説とアクションを設定してから分析することです。仮説を事前に設定してからデータを分析すると、分析結果の精度が上がりやすくなります。
例えば、「部品の納入リードタイムを削減すること」を目的にデータ分析をする場合、以下のように設定するイメージです。
・おそらくA社は、製品の歩留まり(生産数に対する良品の割合)が低いから、納入が遅れるのではないか
・A社をメインにして、納入日数を過去3年分析してみよう
また、事前にアクションまで想定しておくことで、「自分のイメージ」と「実際に分析した結果」に差分が生まれるので、ネクストアクションが浮かびやすくなります。
適切なデータを分析して、ビジネス課題を解決しよう
市場の変化に合わせてスピーディーに施策を実施するためにも、データ分析が欠かせません。データ分析の目的を決めたうえで仮説を立て、必要なデータを収集していきましょう。
分析して終わりではなく、データに裏付けされた戦略を立案し、アクションプランへつなげることが大切です。
なお、データ分析をスムーズに進めるには、データでできることや分析プロセスを把握しておく必要があります。
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