外観検査は、製品の品質を一定に保つために欠かせない工程です。
目視や装置を用いた検査方法がありますが、「すべてのキズや欠陥を見つけるのが難しい」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、あらためて外観検査の必要性や流れを解説しつつ、より検査業務を効率化する方法を紹介します。
目次
外観検査とは?
外観検査とは、製品の表面を確認する検査業務のことです。多くの製造業でおこなわれており、製品の品質が「規定値を満たしているか」を評価します。
外観検査によって、下記のような外観上の欠陥を見つけることが可能です。
- ・ペットボトル容器のラベルの印字ミス
- ・ガラスの割れ、欠け
- ・金属製品(ナット、ワッシャなど)のサビ、キズ
検査員が目視で不良を確認する「目視検査」のほか、センサーや画像処理技術を搭載した「外観検査装置」を利用する方法があります。
外観検査が必要な2つの理由
外観検査が必要な理由は、主に下記の2つです。
- 品質を保証できるため
- 製造工程を改善して品質を維持できるため
順番に見ていきましょう。
理由1.品質を保証できるため
1つ目の理由は、製品の品質を保証できるためです。外観検査を実施することで、「一定の基準や仕様を満たした製品」だけを生産できます。
そもそもメーカーは、安定した品質の製品を顧客に届けなければなりません。しかし、生産数が多い製品の場合、それだけ不良品の数も増加する可能性が高いです。
万が一不良品のまま提供してしまった場合、顧客からの信頼を失う恐れがあります。トラブルを未然に防ぐためにも、外観検査が欠かせません。
理由2.製造工程を改善して品質を維持できるため
製造工程を改善して品質を維持できるのも、外観検査が必要な理由のひとつです。外観検査で不良品が出た場合、「どの工程で不良品が発生したのか?」という原因を突き止める必要があります。
設計や製造プロセスの原因がわかれば、問題点をフィードバックして改善することが可能です。
例えば、時計の組み立てをおこなう工場で「仕様と異なる形の時計」が作られたときに、「作業員が手順を間違えてしまった」ケースを考えてみましょう。
この場合、下記の改善方法が挙げられます。
- ・作業手順が複雑になっていないか見直す
- ・ダブルチェックを取り入れる
上記のようにその都度改善を繰り返すことで、顧客が満足できる製品のクオリティを維持できます。また、不良品を極力ゼロに近づけられれば、不良品が発生したときのロスを減らすことも可能です。
外観検査を実施するときの流れ
続いて、外観検査を実施するときの流れを見ていきましょう。ここでは「ペットボトル容器」を例に挙げて説明します。
No | ステップ | 例:ペットボトル容器の場合 |
---|---|---|
1 | 製品の良否を確認する | ラベルに穴の空いたペットボトル容器を発見する |
2 | 不良品が出た場合、発生した要因を調査する | 小さな穴のため、目視検査で見落としてしまった |
3 | 製造工程や体制に問題点がないか調査する | 目視確認に頼っており、検査員の負荷が大きい |
4 | 製造工程や設計を改善する | 小さな穴や凹凸まで正確に検出できる「外観検査装置」を導入する |
以上のように、発生した要因を調べるだけではなく、「現状の製造工程や作業体制に問題がないか」まで調査する必要があります。
特に、外観検査で「不良品の見逃し」が起きる原因のひとつが、検査員の「人手不足」や「負荷の高さ」です。自動化できる工程は外観検査装置を活用し、不良を見逃さない環境を作っていくことが重要になります。
外観検査の3つの方法
外観検査には、主に下記3つの方法があります。
- 目視で検査する
- AI非搭載の外観検査装置を利用する
- AI搭載の外観検査装置を利用する
それぞれのメリット・デメリットと併せて、順番に見ていきましょう。
方法1.目視で検査する
メリット | デメリット |
---|---|
・特別な設備が必要ない ・熟練した検査員なら、精度の高い検査ができる |
・人力なので時間がかかり、効率が悪い ・人によって判定にばらつきが出る ・採用、育成コストがかかる ・検査員の心身に負担がかかる |
1つ目は、検査員が目視で検査する方法です。検査員がいれば特別な設備が不要な上、熟練した人なら精度の高い検査をおこなえます。
一方で、何年も経験しているベテランと新人では、不良の判定にばらつきが出やすいことがデメリットです。
また、熟練するまで検査員を育成しても、退職してしまう恐れもあります。検査員は長時間集中して取り組まなければならない仕事のため、心身に負担がかかりやすいからです。
以上のようなデメリットにより、検査装置を導入する製造現場が増えてきています。
方法2.AI非搭載の外観検査装置を利用する
メリット | デメリット |
---|---|
・外観検査を効率化できる ・目視検査に近い検査をおこなえる ・人件費を削減できる ・目視検査のようなばらつきを防ぎやすい |
・複雑な判定が苦手 ・多様な形状や材質には対応が難しい ・導入、利用には専門知識をもった人材が必要になる |
今の製造業で主流なのが、外観検査装置を利用する方法です。
外観検査装置とは、カメラで撮影した画像データや赤外線などのセンサーによって、製品の状態を自動で検査する装置のことです。
目視での検査と違い、人件費を削減しつつ、人によるばらつきを防げるメリットがあります。
一方で、あらかじめ不良品の判定値を設定しておく必要があるため、さまざまな形状や材質のある製品には対応が困難です。
また、外観検査装置を導入・利用するには「専門知識のある人材」が必要なため、属人化しやすくなります。
方法3.AI搭載の外観検査装置を利用する
メリット | デメリット |
---|---|
・複雑な判定に対応できる ・種類の多い製品に対応できる ・検査員の熟練度に頼らないため、採用や育成のコストを削減できる |
・初期費用がかかる ・大量の異常データが必要になる |
3つ目は、近年普及しつつある「AIを搭載した外観検査装置」を利用する方法です。製品の画像データをAIに学習させ、学習モデルを構築することで、自動的に良否を判断できるようになります。
一般的な外観検査装置と違い、種類の多い製品でもキズや異物を検知してくれるため、検査の精度が上がりやすいです。
また、検査員の知識や技術に依存しないので、採用・育成コストを削減することが可能です。
種類 | 入力方法 | 精度 |
---|---|---|
一般的な外観検査装置 | △ 不良品の判定値を入力 |
△ 過去に入力していない 不良事例は検知できない |
AI搭載の外観検査装置 | 〇 正常画像と異常画像 をアップロード |
〇 過去の事例から学習するため 精度が高まる |
一方で、AIに学習させるために、「正常な状態の画像」と「異常な状態の画像」を収集しなければならないデメリットもあります。
製造現場ではさまざまな異常パターンが発生するため、画像を集めるだけでも時間を要します。そこでおすすめなのが、「正常な画像のみ」を学習させるだけで異常を検知できる「外観検査AI」です。
画像収集の手間を約50%削減できますので、興味のある方はぜひ下記のページから詳細をご覧ください。
外観検査の段階ごとの主な検査項目
続いて、外観検査の主な検査項目について説明します。
そもそも検査項目とは、「製品のどの部位がどのような状態になっていれば良品or不良品なのか」を文字と写真で記したものです。
製造プロセスのうち、どの段階で実施される検査なのかによって、検査項目が変わってきます。
- 製品が作られたとき
- 製品の表面を見るとき
- 仕上がりを確認するとき
順番に見ていきましょう。
段階1.製品が作られたときの検査項目
製品が作られた段階で、仕様(製品が満たすべき規定)と異なる部分がないかをチェックします。
項目 | 確認内容の例 |
---|---|
形状 | ・定められた形状と違いがないか ・変形や欠損がないか |
寸法 | 定められたサイズと違いがないか |
構造 | ・部品の組み合わせに誤りがないか ・組み立て方にズレがないか |
色 | 塗装の色に変色や色ムラがないか |
上記のような検査をした結果、製品が規格から外れていた場合は除外します。
段階2.製品の表面を見るときの検査項目
製品の表面に「キズや異物の付着がないか」を見ていく段階です。
項目 | 確認内容の例 |
---|---|
見栄え | ・表面に凹凸がないか ・スジやシワができていないか ・仕様と違う感触がしないか |
キズ | 小さなキズやスレができていないか |
付着物 | 汚れやほこりがついていないか |
特に見た目の検査は、検査員によって善し悪しの判断が異なることもあるため、基準を決めにくい部分です。あらかじめ基準書を作成しておき、スムーズに検査できる体制を作らなければなりません。
段階3.仕上がりを確認するときの検査項目
完成した製品に対し、「良品と異なる部分がないか」を最終チェックします。
項目 | 確認内容の例 |
---|---|
組み立て | ズレやキズがないか |
仕上がり | ・バリや欠け、突起がないか ・加工したときの補助具の跡がないか |
以上のような検査を経ることで、見た目だけではなく、顧客が安全に使えるような製品に仕上がります。
外観検査で発見できる不良の例を紹介
外観検査を実施することで、実際にどのような不良が見つかるのか紹介します。ここでは金属・食品・日用品業界の例を見ていきましょう。
業界 | 検査対象の例 | 不良の例 |
---|---|---|
金属業界 | ナット・ワッシャ・ベアリング | ・水の侵入や湿気によるサビ、腐食 ・バリ、欠け |
ネジ・ボルトの輪郭 | ・ネジを切ったときに残るバリ ・加工時の割れ、欠け |
|
食品業界 | 賞味期限の印字 | ・賞味期限の印字ズレ ・日付の印字間違い |
異品種の混入 | パッケージが類似した製品の混入 | |
日用品業界 | 製品のラベル | ・ゴミやほこりの混入 ・ラベルの破れ、ズレ ・印字の間違い |
このように、外観検査によってさまざまな不良を発見することが可能です。
しかし、検査員の経験に頼った「目視検査」や、不良の判定値を設定する「外観検査装置」では、すべてのパターンへの対応が難しいケースもあります。
そこで提案したいのが、AIを活用した外観検査装置の利用です。
一般的には「正常」と「異常」の両パターンをAIに学習させる必要がありますが、TDSEの外観検査AIは「異常パターンの画像のみ」で判定できます。
例えば下図のように、テクスチャ系からカプセルや電子部品まで、異常を検知することが可能です。
プログラミング不要でAIの学習モデルを構築できるため、専門知識がなくても使い始められます。
「現状の外観検査では、あらゆる不良に対応しきれない」とお悩みの方は、ぜひ下記のページからサービスの紹介をご覧ください。
外観検査を効率化するには、AIの活用が重要
外観検査を実施することで、不良品を発見して流出を防げるようになります。また、根本的な原因を突き止めて、製造プロセスを見直すのにも役立ちます。
近年はAIを搭載した外観検査装置も増えているため、属人化を防ぎつつ、作業効率を上げることが可能です。
外観検査装置の導入を考えている方は、ぜひAIの活用を検討してみましょう。