近年はChatGPTを始め、さまざまな生成AI(入力データをもとにコンテンツを生み出すAI)サービスが登場しています。
今回はそのなかでも、テキストから画像を生成する「画像生成AI」について説明します。使い方からビジネスにおける活用例まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
画像生成AIとは?
出典:Stable Diffusion
画像生成AIとは、テキストを入力するとイメージ画像を自動生成してくれるAIのことです。
欲しい画像イメージを「プロンプト(生成して欲しい画像を説明したテキスト)」で具体的に指示することで、指示に合った画像が表示される仕組みです。
生成される画像は人間や動物、機械、架空の建物まで多岐にわたります。絵を描くスキルや写真撮影のスキルがなくても、欲しい画像を手軽に入手できるのがメリットです。
それでは、実際にどのように画像が生成されるのか見ていきましょう。
画像生成AIの利用例
ここでは、画像生成AIサービス「Stable Diffusion」の利用例を紹介します。プロンプトの入力欄に「robot」と入力したところ、次の画像が表示されました。
コミカルな印象のロボット画像が生成されています。ここでよりメカの質感や精密さを出すために、次のプロンプトを追加しました。
- ・concept art(コンセプトアート)
- ・extremely detailed(非常に詳細な)
- ・hard surface(硬い表面)
1枚目の画像に比べると、より精密なロボット感が出たのではないでしょうか。このように、画像の詳細をカンマで区切って記載することで、イメージに近い画像を生成しやすくなります。
次は、単に「cat」と指定した猫の画像です。
実写に近い猫の画像が生成されたため、以下のプロンプトを追加してアート風に調整してみます。
- ・watercolor(水彩)
- ・blue background(青色の背景)
プロンプトは「最初に記載した単語ほど優先される」と言われています。まずは被写体を決めたうえで、背景やスタイル、構図などを細かく指定するのがおすすめです。
画像生成AIが注目されたきっかけ
画像生成AIが注目されたきっかけは、2022年の7月にオープンベータ版が公開された「Midjourney」です。
誰でも簡単に利用できる画像生成AIサービスとして登場し、SNSで生成画像が多数アップされて話題になりました。
英国のAI開発企業、Stability AIがリリースした「Stable Diffusion」もそのひとつです。生成した画像を商用利用できるサービスのため、より画像生成AIが注目を浴びるようになりました。
また、ShutterStockやAdobeは、画像生成AIを既存サービスに取り入れています。ShutterStockはクリエイターを抱えて写真を販売していましたが、自動生成した画像も販売できるようになりました。
さらに、画像生成AIはビジネスでも活用され始めています。詳しく見ていきましょう。
ビジネスにおける画像生成AIの活用例
ビジネスにおいて、画像生成AIは以下のように多様な領域で活用されています。
- 商品開発やデザイン
- コンテンツ制作
- ファッション
- ゲーム開発
- 医療
どのように活用されているのか、順番に紹介します。
活用例1. 商品開発やデザイン
1つ目の活用例は、商品開発やデザインです。アイディアを得たり、デザインのベースとして利用したりするのに画像生成AIが使われています。
生成された画像を修正・切り抜きして、商品画像やロゴ、アイコンを作成するなどです。
なかにはバナー広告を、フリー素材から画像生成AIで作成した画像に変更したところ、CTR(クリック率)が約1.8倍アップしたケースもあります。
参考:日経クロストレンド|「画像生成AI」でマーケ激変? Facebook広告でクリック率1.8倍
画像生成AIは中心となるモチーフだけではなく、テイストや構図、背景なども詳しく指定することが可能です。A/Bテストを繰り返して絞り込んでいくことで、よりイメージに近い画像に近づけやすくなります。
活用例2. コンテンツ制作
Webサイトや動画といったコンテンツ制作にも、画像生成AIが活用されています。例えば株式会社mignは、画像生成AIを組み込んだWebサイト制作サービスの提供を開始しました。
参考:PR TIMES|画像生成AIを組み込んだウェブサイト制作サービスを提供開始
サイト内でユーザーが遷移したページ情報を踏まえて、AIがトップページの背景画像を生成する仕様です。ユーザーの興味関心にあわせてデザインを変えられるため、1人ひとりに寄り添ったサイトデザインが可能です。
また、近年は文字を入れ込んだ動画を簡単に作れるサービスも登場しています。
活用例3. ファッション
ファッション業界では「バーチャル試着室」に画像生成AIを活用しています。バーチャル試着室とは、ECサイト上で訪問ユーザーに着せ替えを体験してもらうサービスです。
ユーザーの体型に近いAIモデルに商品を着てもらうことで、着用イメージを湧きやすくし、購入を促す狙いがあります。
また、AIモデルに服を合成させるため、写真撮影に必要な作業時間や、人員コストを削減できる点もメリットです。
活用例4. ゲーム開発
画像生成AIを活用して、ゲーム内のキャラクターや背景、アイテムなどのグラフィックを生成することも可能です。
実際にアメリカのゲームソフト開発会社のなかには、画像生成AIを開発ツールに採用しているところもあります。
石やレンガなどのテクスチャを作成するのにもAIを活用し、ゲーム制作の効率化や、クオリティの向上を目指しています。
活用例5. 医療
最後は医療において、画像生成AIで「症例の少ない病気の画像データ」を増やすという活用例です。症例の画像データが少ない場合、臨床研究を推進できないケースがあります。
そこで画像生成AIで実物そっくりの臓器の異常画像を作成することで、より詳しい研究や治療法の開発に役立てています。
また、広島大学大学院医系科学研究科では、治療前に撮影した画像から「臓器の輪郭を自動抽出する」システムを開発しました。
参考:広島大学|【研究成果】AIの画像生成技術(GAN)による臓器の自動認識、輪郭作成システム開発
輪郭作成の時間が短縮されるため、医療現場の業務改善や効率化が期待されています。
このように、画像生成AIは多様な領域で活用され始めていますが、一方で課題もあります。続けて見ていきましょう。
画像生成AIにおける2つの課題
画像生成AIにおける課題は、主に次の2つです。
- 著作権問題
- フェイク画像の悪用
順番に説明します。
課題1. 著作権問題
AIの領域では、著作権などの法律関連がまだしっかりと整備されていません(2023年6月21日時点)。
文化庁はAIと著作権の関係について整理し、今後周知していく方針です。トラブルを防ぐためにも、こまめに動向を追っておきましょう。
実際にストックフォト大手のGetty Imagesが、画像1,200万枚以上を無断・無償で学習に利用したとして「Stability AI」を提訴した事例もあります。
参考:CNET Japan|ゲッティイメージズ、画像生成AI「Stable Diffusion」開発元を提訴–著作権侵害で
サンプル画像に入っていた透かしが、Stability AIの生成画像上で再現されていたことから発覚しました。
そのため、AIの生成画像を利用する際は、「既存の著作物と類似性がないか」「既存の著作物をもとに作成していないか」などをチェックしましょう。
参考:文化庁|AIと著作権の関係等について
課題2. フェイク画像の悪用
フェイク画像を悪用したフェイクニュースなど、倫理的な課題も挙げられます。
2022年9月には、画像生成AIで作成した画像を「ドローンで撮影した静岡県の水害の画像」としてSNSに投稿したユーザーが現れています。投稿は拡散され、物議を醸すことになりました。
また、2023年5月には、消防組合の消防隊員が「観光地で撮影したようなフェイク画像」を使用し、旅行の助成金を受け取っていた事例もあります。
画像生成AIの精度が向上するほど、フェイクかどうかを見抜くのは困難です。
以上の懸念点があるものの、画像生成AIは今後もエンターテインメントからヘルスケアまで、幅広い領域で応用されていくと考えられます。
自社の事業や社内利用に取り入れることで、サービスの充実や業務効率化が期待できます。
教師データの作成を画像生成AIで自動化することも可能
教師データの作成を、画像生成AIで自動化することも可能です。教師データとは、AIに学習させる元データを指します。
前述した症例の少ない病気のように、教師データが少ないケースも多々あるでしょう。
画像生成AIに教師データそのものを作成させ、そのデータをAIに取り込んで学習させることで、正常・異常を判断する精度を高められます。
例えば、弊社TDSEが支援したなかには「送電線の点検作業を効率化するため、AIを使用して異常箇所を検出できるようにした」事例があります。
もともと異常画像が少なかったため、複数パターンの異常画像を手動で用意し、AIに学習させて精度を向上させました。
今後はこのようなケースでも画像生成AIを活用することで、課題解決をよりスムーズに進められる期待がもてます。
▼事例の詳細を見る
電気の命綱である送配電網をAI技術を活用して効率的に見守る(東京電力パワーグリッド株式会社)
このように、画像生成AIの活用方法は多岐にわたります。
「自社のビジネスにAI技術を取り入れたいが、何から手をつければ良いかわからない」などお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
画像データをビジネスに活用し、効率化やコスト削減を目指そう
今後、様々な業種やサービスなど幅広い領域で画像生成AIが活用されていくことでしょう。
著作権やフェイク画像の悪用といった課題はありますが、うまく取り入れることで業務効率化やコスト削減に繋げることも可能です。
TDSEには画像データを活用したDXの支援実績が多数ございます。
ぜひ事例をご覧いただきながら、自社のビジネスにおける画像データ活用についてご検討、ご相談ください!
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